食生活の欧米化などにより増加している胆石症
胆石症とは、胆嚢や胆管に胆石ができる病気です。胆石は、胆汁に含まれるコレステロールやビリルビンが結晶化して形成されます。
結石の発生した部位によって、胆のう結石・総胆管結石・肝内結石に分類されますが、全体の約80%を胆のう結石が占めます。
胆石が大きくなったり胆管に詰まった場合には、激しい腹痛や吐き気などの症状が引き起こされます。
近年、食生活の欧米化、社会の高齢化によって、国内で胆石症を発症する方は増加傾向にあります。
そもそも胆嚢の機能とは?
胆嚢は、肝臓と十二指腸をつなぐ管の途中にある袋状の臓器です。ちょうど、右上腹部のあたりに位置します。
胆嚢には、肝臓で作られた胆汁という消化液を濃縮し、一時的に溜めておく役割を担っています。また、食べ物が小腸に入ってきた時には胆嚢が収縮し、胆汁を出すことで、消化を助けます。
胆石ができる場所は?3つの胆石の種類
胆のう結石
胆のうにできる結石です。胆石症全体のうち、もっともよく見られます。
胆のうの出口で結石が詰まると、右上腹部やみぞおちに激しい痛みが出ます。詰まった状態が持続すると、発熱・黄疸・腹痛などを伴う急性胆のう炎を合併します。
総胆管結石
胆のう・肝臓から出る管が合流した総胆管にできる結石です。
十二指腸へと続く出口で結石が詰まると、右上腹部やみぞおちの激しい痛、黄疸、発熱などの症状が現れます。また、急性胆管症、急性膵炎を引き起こすこともあります。
肝内結石
肝臓内の胆管でできる結石です。
無症状のケースも少なくありませんが、腹痛・発熱といった症状が見られることもあります。
胆石症の原因
胆石症のはっきりとした原因は分かっていません。
現在のところ、食べ過ぎ・栄養バランスの偏り(高脂肪・低繊維)・肥満・運動不足・ストレス・妊娠・長期にわたるピルの内服・極端な体重の減量・脂質異常症などが、胆石症の発症に影響しているものと考えられます。
胆石ができやすい方の特徴
リスク要因 | 説明 |
---|---|
肥満/運動不足 | 体重が多いとコレステロール胆石のリスクが高まります 無理なダイエットを繰り返している |
性別 | 女性は男性よりも約2倍胆石症になりやすい |
年齢 | 年齢が上がるほどリスクが高まります |
食生活 | 高脂肪や低繊維の食事内容、就寝前の食事習慣がリスクを高めます |
胆石症の検査
胆石症が疑われる場合には、以下のような検査を行います。
結石が生じた部位、患者様の状態などを考慮して、できるだけご負担の少ない検査を選択します。
血液検査
炎症、肝機能、黄疸の指標などについて調べます。
腹部超音波検査
ほとんどの結石を発見することができます。ただし、総胆管結石に対しては、あまり精度が高くありません。
腹部CT検査
多くの胆石の場所、またその大きさや形状などを把握することができます。
MRI検査(MRCP:磁気共鳴胆管膵管撮像法)
直径5mm以上の結石の診断能は、約95%にのぼります。ただし、超音波検査やCT検査と比べても検査時間が長くなるのが難点です。
内視鏡検査(EUS・超音波内視鏡検査/内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)
特殊な内視鏡を用いた検査です。主に、総合病院などで行われます。
胆石症の治療
胆石のある部位に応じて、治療法を選択します。
胆のう結石の治療
無症状の場合は、胆のうがんの合併がないことを確認した上で、経過観察とします。
何らかの症状がある場合には、腹腔鏡による胆のう摘出術が行われます。胆のうの癒着がある場合、胆のうがんの合併がある場合などは、開腹手術が必要です。
総胆管結石の治療
無症状であっても重症化することがあるため、原則として治療が必要です。
内視鏡を用いて、結石を除去します。外科的な手術が必要になることもあります。
肝内結石の治療
肝内胆管がんを合併していないことを確認した上で、内視鏡を用いて結石を除去します。内視鏡では対応できず、外科的な手術が必要になることもあります。
肝内胆管がんを合併している場合には、肝臓の一部を切除する等、肝内胆管がんの治療が必要になります。
がん化のおそれもある胆嚢ポリープ
胆嚢ポリープとは、胆嚢の内壁にできるイボ状の組織を指します。良性のものもあれば、悪性のものもあります。
多くは無症状であり、検査で偶然発見されるケースが目立ちます。
胆嚢ポリープの種類
コレステロールポリープ
胆嚢ポリープのほとんどを占める良性のポリープです。
炎症性ポリープ
炎症によって形成されるポリープであり、多くの場合良性です。
腺腫性ポリープ
胆嚢の粘膜細胞の異常増殖によってできるポリープです。がん化のリスクがあります。
胆嚢がん
ポリープのように見えるがんです。
胆のうがんを疑うポリープの特徴
大きなポリープ、短期間で成長するポリープは、胆のうがんを疑う必要があります。早期に、詳細な検査を行います。
胆嚢ポリープの原因
胆嚢ポリープの原因について、未だはっきりしたことは分かっていません。
ただ、肥満や脂質代謝異常、耐糖能異常(糖尿病予備軍)、胆のう炎などは、胆嚢ポリープのリスク要因になると考えられています。
胆嚢ポリープの症状
胆嚢ポリープには、基本的に自覚症状はありません。
ポリープが大きくなったり、胆石症を合併している場合には、右上腹部に痛みが出ることがあります。
胆嚢ポリープの検査
主に、以下のような検査を行います。
腹部超音波検査
ポリープの位置や大きさ・数・形態などが分かります。
MRI検査
超音波検査で十分な観察ができなかった場合、胆汁の流れが障害されている場合には、MRI検査を行います。
超音波内視鏡検査
特殊な内視鏡を用いた検査です。主に、総合病院などで実施されます。
血液検査
胆嚢がんが疑われる場合、その腫瘍マーカーについて調べます。
胆嚢ポリープの治療
ポリープが10mm以下で、悪性の可能性が低い場合には、定期的な検査を行いながら、経過観察に留めます。
10mm以上のポリープが見つかった場合、悪性の疑いがある場合には、手術が必要になります。
胆嚢ポリープになったら食べてはいけないもの
胆嚢ポリープが見つかった場合も、基本的に「食べてはいけないもの」はありません。
ただ、胆嚢ポリープのリスク因子と言われる、食べ過ぎ・栄養バランスの偏り(高脂肪・低繊維)などはできるだけ避けるようにしましょう。生活習慣病など、他の病気の予防という意味でも大切になります。
良性の胆嚢ポリープは放置してもよい!?
胆嚢ポリープの中には、がん化するものがあります。
特に、短期間で大きくなるポリープについては、その可能性が高くなります。その変化に早期に気づき、早期治療へとつなげるためにも、良性との診断後も必ず定期的に検査を受けるようにしてください。